イスラム教の法に従い生産・加工された食品「ハラルフード」を、ムスリムに届けるための移動販売車のロゴと内外装のデザインをお手伝いさせて頂きました。
通常の空間デザインプロジェクトとは異なり、今回は一般的に特定の土地に固定されていて動かないはずの空間が自由に移動し、かつ、その荷台の中という極小スペースをショップにするという点がとてもユニークだと感じました。そこで、移動時と停車時(開店・閉店時)それぞれに求められる外観、内観の役割や性能を整理し、双方に応えられるデザインのかたちを追求することが1つの切り口になるのではと考え、デザインに取り組んでいます。例えば、移動時にはサインカー、停車時には店舗ファサードとなる外観デザイン、極小空間ならではの特注レジカウンターや、移動時は揺れに強く停車時はストックとなる商品棚の設計、車種の特徴を活かした通り抜けの動線等は、今回ならではのアイデアだと言えます。
グラフィックに関しては、宗教と密接なミッションであったため、使用するシンボルやカラー、フォントについて歴史や背景を踏まえて慎重に検討しています。最終的なロゴは、イスラムの神聖なモチーフや色と店名である「Said(喜び)」を掛け合わせ、敬意と幸運の想いをシンボルと色で表現したものとなっています。
余談ですが、ムスリムの総人口は、遠くない将来にはキリスト教の総人口を超え世界第一位になると言われています。丁寧に処理されたハラルフードは安心して食べられるとして、ムスリム以外の人々の間でも密かな人気を博しており、個人的にも今後が楽しみな分野です。
福岡県福岡市中央区