福岡パルコで行われた九州産地ブランド品の紹介・販売を通し、産地の今を伝えるイベントの会場構成です。空間が単に商品をたくさん売るための場ではなく、同時に、その商品の生まれた背景や産地そのものをでき得る限り伝えるための場であることが、ここでは重要だと考えました。そのため「新しく作る」という発想ではなく、実際に現地を訪ね、そこにある道具や使われているものの選定と編集によって会場を構成するという手法をとっています。
プロジェクトに臨むにあたり、「みんなでつくる」「お金に頼らない」「ゴミをつくらない」といったテーマをとても大事にしました。特にファサード(商業空間のデザインで顔となる部分)は、呼びかけで集まった様々な形、大きさ、用途の、不要となった器を並べた「水田」に、会期中の参加型田植えワークショップを通し、入れ替わり立ち代わりたくさんの人の手で会期を通して徐々に完成させました。また、できる限りの物語の継続と器のリユースとして、ワークショップ参加者に希望をとり、会期後に育て方のメモと一緒に稲と器を持って帰ってもらっています。このように、現代の表現や消費の在り方に対する問いかけを、仮設空間ならではの表現により実現させました。(余談ですが、収穫までには至らなかったものの、自分の育てた稲も穂をつけてくれました)
プロジェクトは、実に多くの方々のご協力、ご賛同により実現しました。想いを抱きそれを伝えることの大切さ、人の温かさ、個人という非力さを改めて感じさせてもらえる素晴らしい機会でした。アートディレクター兼デザイナーの先崎哲進氏との共同案件で、企画とグラフィックはすべて氏の構想とデザインです。
福岡パルコ8F