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KOSUKE ARIYOSHI

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IKEJIRI DENTAL CLINIC

池尻歯科医院

既存歯科クリニックのリニューアルプロジェクト。先々代より地元馴染みの患者に愛され、比較的御高齢の方が多いという点を除けば、医療方針や要望共に王道とも言えるオーソドックスなプログラムであった。私たちは、この一見手がかりの少ない(与条件の少ない)プログラムに対して、実験的であったり斬新な何かを提案するよりも、ベーシックな歯科空間というものを改めて再定義、アップデートする機会として捉えプロジェクトに取り組んだ。

歯科のインテリアは『白色』を多用したものが多い。それは白という色が『白い歯』『無菌・清潔』『清廉・潔白』といったポジティブなイメージを想起させる為だと思われるが、一方でその病院然とした配色は患者を緊張させ、近寄り難さを与える懸念が常にある。昨今では患者目線を重視する施述スタンスはもはや常識であるが、インテリアがそれに応えれていないケースは少なくない。本案では、従来歯科インテリアに多い白色を前提とする組み立てを止め、対象空間のそもそもの『主体』や『目的』の明確化を起点とするデザインアプローチを試みた。例えば待合は『患者』という主体が『一定時間滞在する』為の空間であり同時に『不安を和らげる』という目的がある。その与件に応える空間が例えば純白で照度が高く無機質な空間でないことは想像に易い。この手法を各々の空間に採用し、利用者に寄り添った居心地や使い勝手の良いインテリアを実現した。

また、このプロジェクトに限らず我々が常々考えていることとして、高価/安価、天然/人工、特注/既製、新/古、有名/無名、といった二項対立的な価値感の中で空間編集することに疑問があり、あらゆる要素を等価に扱い、ミックス&コラージュさせることを試み続けている。当プロジェクトでも、待合天井と視覚的に連続する庇は新規だが窓は既存であったり、照明器具をメーカーカタログ品、名作デザイナーズ、オリジナル製作を適材適所で使い分けている。大事なことはコラージュ結果に違和感が無いことであり、その達成は、建築の奥行きに寄与する一つの要素であると考えている。

斬新さや派手さは無いものの不思議な魅力や安心感、そして美意識を内在させながらも利用者を置き去りにしない、ほど良い塩梅のニューノーマルな歯科空間がつくれたように思う。

Detail

計画地

福岡県福岡市西区

用途
歯科医院
種別
改修
構造
鉄骨造
規模
1階/3階建
改修面積
121.26m²
竣工日
2020.3
竣工状況
竣工

Partner

プロジェクトパートナー
有吉祐人 | Spumoni Design Studiohttp://spumoni.tv
施工
牛島基博・康介 | 牛島木工所http://ushimoku.org
ロゴ・サイン
有吉祐人 | Spumoni Design Studiohttp://spumoni.tv
ツール
兼行智虎 | Source design officehttp://www.source.jp
写真
針金洋介 | 針金建築写真事務所https://www.hariphoto.net/

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