CLINIC

HAPPA DENTAL CLINIC

はっぱ歯科

新築一棟貸しの「建貸方式」による歯科プロジェクト。貸主・借主それぞれに設計事務所が存在した為、実施設計や構造、外構、申請業務、現場監理を貸主側設計事務所が担い、借主側の我々が基本計画と内装の設計監理および外観のデザイン監修を担当した。実際は業務範囲の明確な区分は難しく、計画の整合性や仕様、ディテール、スケジュール、コスト等、互いの領域を柔軟にクロスオーバーさせることで実現に至った。

敷地は、交通量の多い道路沿いの薬局および小児科とのいわゆる郊外型の小規模医療モールの一角にあり、道路に拓けた駐車場と単線とに挟まれていた。線路横という立地は魅力に思えたが、線路反対側が閑静な団地エリアであることや、精密な作業に害となる外音や振動の排除、道路からの引きをメリットと考えたこと、モールという集合形態の長所、イベント時の駐車場と建物の一体利用案などから、結果として線路側を背面、駐車場側を正面とするオーソドックスな配置を採用した。

計画の最もユニークな点は、家賃と面積が相関する建貸で、歯科本来の目的や収益と直結しない多目的な市民ギャラリーを計画した点にある。この空間は、待合の延長でありながら独立性もあり唯一外部に開かれている。地域のこどもや大人、学生、アーティストの為の作品発表の場や、絵画教室などのアクティビティの場、イベント時の休憩やキッズスペースとしてなど、歯科目的でない人々も気軽に利用できる地域交流の場となることを願い設けられた。木質の優しい内装、ライトディフューザーとしての曲面意匠、伸びやかな吹抜、広場に面したガラスの大開口、受付から見通せない配置など、様々なデザインソースの集積により独自性を獲得した。

外観はフリースペースそのものをファサード化した明快な意匠とした。特に陽が落ちてくると内部の明かりが外部へと滲み出し、道路との引きを活かした縦長の「ショーケース」が夜風に浮遊する。