






DETAILS








福岡にてハンドメイドの鞄ブランドを展開するKaILI(カイリ)。2023年の1期工事に続き今回2期工事としてファサード改修を行った。本工事では、スモークガラスのアルミサッシで構成された既存ファサードを刷新し、ブランドのコンセプトやイメージ、そして内装との調和を踏まえながら、商品スペースの増設とガラスの透明化による視覚的印象および視認性の向上を目指した。
一般的に、店舗ファサードには大きく3つの役割があると考えられる。
①人の視線を引き込むこと
②店舗の印象を強く刻み込むこと
③ブランドに内在するイメージを具現化すること
本計画ではこれらを押さえつつ、新たな機能の付加と空間的ポテンシャルの最大化を目指し、構成・ディテール・寸法・素材に至るまで、一つひとつ丁寧に検討を重ねた。
具体的には、安価でありながら耐水性と耐久性に優れるフレキシブルボードを外部腰壁から内部ディスプレイ天板へと連続させ、その境界をディテールレスな透明一枚ガラスとすることで、外部から自然と視線を引き込む(①)ショーウィンドウを形成した。幅はフレキシブルボードの規格サイズを基準として決定し、端材の発生や劣化の要因となるジョイントをなくすことで、同時にコストダウンも実現している。腰壁の高さについても、建材規格寸法の範囲内で、商品の見やすさ、外部からの視認性、既存プランターとのバランスなどを複合的に検討し決定した。
さらに、商品ディスプレイを兼ねたショーウィンドウに続き、残りのファサード全体を覆うように一枚引きの大きな木製框引戸を設計し、印象的な店舗ファサード(②)を構成した。面材にはあえて半透明素材を採用することで、店内に光と気配を柔らかく取り込み、来店客が落ち着いて過ごせる環境にも配慮している。この面材は、厚みの異なるブラウンとクリアの中空ポリカーボネート板を90度回転させて重ね合わせたもので、風景をわずかに歪めながら映し込むホログラムのような効果を生み、眺める角度や時間によって表情が刻々と移ろう。(なお、この実験的なアイデアは、2020年竣工の住宅「西福間の境界」で採用した建具の発展型である)
この引戸は、既存との取り合いや店内スペースとの関係から、扉厚や納まりの精緻な調整とシャッターをぎりぎり避けるために引手やシリンダーを框と同面に納める必要があった。特に外部側引手は、中空ポリカーボネート板の押さえを兼ねるステンレス曲げ加工の特注金物とし、最小限の要素による機能と意匠の両立を図った。
また、1期工事と同じ杉材による統一、床や可動什器で用いたグリッド要素の引用、木・金属・セメント板・ガラス・ポリカーボネート・アクリルといった異素材を違和感なく融合させた構成、極太の框と十字架状の繊細な煽り止めの対比、存在感を保ちながら曲面加工によって柔らかさを獲得した杉の支柱、一期工事の残材であるアクリル棒の再利用など、ブランドコンセプトである「矛盾あるデザイン」と、実際のプロダクトから感じられる「矛盾を感じさせない調和」を共存させたファサード(③)として、ひとつの答えを導き出すことができたと考えている。
■1期内装工事
https://notequal.jp/project/3425
■特注プランター
https://notequal.jp/project/3733
福岡県福岡市