かつて塩田とその宿場町で栄えた古い民家や石畳の残る通り「津屋崎千軒」。その一角にある古い家屋を、東京から移住してきた革職人のご夫婦のための工房兼ギャラリーへと改修しました。予算が非常に限られていたことを逆手にとり、素人でできないことを除き、できる限り自分たちの手でつくりあげることで、苦労や喜びなどを分かち合いながらここでしかできない空間をつくりました。
たまたま別のプロジェクトで頂いていた廃材木を運搬、選別し、製材から加工、取付から仕上までを自らの手で行いました。また、施主の強みを活かした革の特注コンセントプレートやランプシェード、ハンドルカバーの製作や、既存のアルミ引戸とガラスを再活用したエントランス、廃盤となっている既存タイルを活かしたプラン、昔の機織り機を転用したセンターテーブルなど、今あるものや、使えるもの、ここでできることが何かを見つけ出し、そのデザインの積み重ねにより全体を作り上げています。
工事中に近所の方が覗きにこられたり、会話を交わしたり、何かを「つくるプロセス」の重要性を本当に肌で感じたプロジェクトでした。今回、数えきれないほどの多くの方々の協力を得て実現しています。お金では決して手に入れることのできない、今尚残る確かな絆に触れることができました。
福岡県福津市津屋崎