5月6日、博多区御供所町に「Maison HAKOSHIMA」という小さなテキスタイルメーカーが誕生します。戦前まで生産されていた「箱崎縞」を復元し、衣類の販売と喫茶スペースがひとつになったユニークなお店となります。喫茶では、ハンドドリップのコーヒーや茶葉にこだわった紅茶、ほうじ茶、素材や製法にこだわったオリジナルの手焼き菓子が頂けます。
御供所町は、博多駅のほど近くにもかかわらず由緒ある寺院が数多く残る街です。街自体にどことなく気品や気概が漂っており、古きものを尊重する心、すなわち時間の蓄積を大切にする心や、一方で自由を許容していることの表れでしょうか個性豊かな店舗がひっそりと点在しています。そのような文脈を踏まえ、極端に原型を変えるというよりもできるだけ既存(場の記憶、時の蓄積)の継承を考え、最小限の手数で店舗としての機能とブランド表現を両立できるように構成や寸法、素材や仕上を慎重に考えていきました。がらんとした荒々しいむき出しの躯体に、無節・無垢・無塗装の白っぽい木塊のような極小の厨房をそっと置く、ただそれだけで場に必要な緊張感を創出しつつ、洋の喫茶と和のギャラリー双方を適度にゾーニングしながらも違和感なくつないでいます。今は先のみえにくい時代ですが、素地(Nude/ヌード)であることは、今後様々な変化に対応できる余白の多い計画とも言えます。この空間の為にデザインしたオリジナルのペンダント照明もピリリと良いアクセントになったかと思います。
また、空間の最奥には博多織の現役織機が鎮座しています。日頃なかなか見れない道具を、今回の計画で気軽に見ることができる機会も生まれました。このように、ささやかな計画ながら、街、喫茶、ギャラリー、織機というように、古いものや新しいもの、美味しいものや文化的なものを空間として結び、御供所町に優しい賑わいを生み、ひいては美しい街並みの一部となっていくことを最大の目標に据え、取り組んできました。
ぜひ一度訪れてみてください。
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店名:Maison HAKOSHIMA
住所:博多区御供所町12-2
施工:村松健太/KENTAS
プロダクト製作:酒井航/DOUBLE=DOUBLE FURNITURE
材料協力:峯公一郎/九銘協、鷹野宏典/鷹野木材
植栽:つむぎ
ロゴ・包装図案:牧野伊三夫
菓子レシピ:山本ゆりこ