●北欧6日目(①〜②)/ Sweden
①朝食&移動 → ②スコーグスシュルコゴーデン → ③セント・マークス教会(外部)→ ④セント・マークス教会(内部)→ ⑤Parlans → ⑥Kvarnen
6日目その1。(5日目はこちら/旅初日はこちら)旅の疲れもなんのその。いつものように早起きをして準備をすませ、バーンズホテルの食堂でモーニングを頂きます。特別手の込んだ料理があるわけではないのですが、雰囲気が最高に良いことに加えてくシンプルに素材が美味しくてついつい食べ過ぎてしまいます。この日の目的地は、、なんと墓地!スウェーデンまで来て半日かけてわざわざ墓地へ行きます笑 お昼はハイキングの予定なので、NK(エヌコー)という王室御用達の高級デパートの地下にあるデリで事前にお昼ご飯を調達。Tセントラーレン駅からトラムに乗ります。美麗なグラフィックが描かれたモダンなモザイク画が素敵です。Tセントラーレンからトラムに乗って30分ほど南下するとスコーグスシュルコゴーデン駅に到着。目指す墓地の名前がそのまま駅の名前なので迷わず行けました。駅を降りてサインに従いしばらく緑道を歩いて行くと目的地に到着です。北欧は光も空も本当に綺麗で、緑も映えます。
スコーグスシュルコゴーデン(森の墓地)は、1994年に世界遺産に登録された火葬場と5つの礼拝堂をもつ共同墓地です。コンペの末、当時無名だったグンナール・アスプルンドとシーグルト・レヴェレンツの共同設計案が勝利、1940年に完成しました。共同設計と言っても、メインのほとんどをアスプルンドが設計してしまったことやレヴェレンツが途中でプロジェクトを離れたことから、日本では森の墓地の設計者=アスプルンドと思われていて、レヴェレンツが共同設計者であることはあまり知られていません。セーデルマルムのアートブック店主に直に聞いた話ですが、あえて「日本では」と書いたのはスウェーデンではむしろレヴェレンツの方が評価されているからです。この森の墓地のあとにレヴェレンツの代表作を訪れますが、素晴らしい設計者であったことはその時に改めてご紹介します。ちなみにアスプルンドの死後、森の墓地を一手に引き受けてまとめあげたのもレヴェレンツです。
森の墓地は、死すれば森に還るという北欧の死生観が広大なランドスケープとして表現されている点が最も素晴らしい点だと思っています。ランドスケープが広大だということは、参列者はいやが応にも歩かなければならないわけですが、その歩く行為そのもの、時間までをも葬儀における瞑想的な要素として計画されていて、それが本当に素晴らしい。もちろん、それは美しい景観、建築、ランドスケープのバランスあってこそで、設計者の力量をうかがい知ることができます。
左手には真鍮が経年し緑青化した笠木とさほど高さのない(広大なスケールに対してはむしろ低い)スタッコの壁が目線を切り、右手はそれとは反対にどこまでも開放的で美しい丘陵が広がります。自然と意識は目の前の一本道に注がれ、その先のおそらく巨大なのであろう(距離があるために歩きはじめはその大きさがわからない)十字架を見つめ、ゆるやかな登り坂を黙々と歩く。地続きなのに、歩くほどに徐々に別のどこかへと向かっているような不思議な気持ちになります。やがて神殿のような列柱の大広間に出ます。火葬場の前室とのことですが、礼拝堂や火葬場は使用中で、中まで見られなかったのは残念でした。彫刻は、ヨーン・ルンドクヴィス作。
レヴェレンツの瞑想の丘からアスプルンドの建築群を俯瞰することができます。リズミカルな建築群とシンプルなシークエンスが一目でわかりますね。瞑想の丘は極めてシンプルですが、それゆえに静寂でとても美しいランドスケープです。風習でしょうか、石垣の上には遺族のものなのか想い想いのメッセージが書かれた白い小石が並べられています。その様子に不謹慎ながら哀しさというより楽しさ、お手紙のような意図を感じてしまったのですが、もしかすると死ぬということは誕生の前段であり必ずしも絶望ではないという死生観によるものなのかもしれません。そのあたり詳しい方がいらっしゃったら教えてください。昼休憩をしたのちに、アスプルンドが設計した森の礼拝堂に向かいます。
1920年に完成した森の礼拝堂は、この墓地で最初に完成した建物だそうです。日本の鳥居を思わせる小さなゲートをくぐり、針葉樹林を一本道に突き進んだ先にトンガリ屋根の小さな礼拝堂が見えてきます。何気にこの小さなゲートが結構効いていて、これによってゲートの向こう側を聖域のような厳かなエリアに仕立て上げているように感じます。塀の低さから考えても防犯としての役割はほとんどありません。伊勢神宮の正宮にも通じるその手法ははたして偶然でしょうか。また、可愛らしい建物に意識がいきがちですが、まずもって建ち方が非常に優れています。そして小さすぎるくらいに抑えたスケールがどこか物語的、浮世的な印象を与えています。建築家であり建築歴史家である藤森照信氏もミニチュアのように錯覚させる独特のスケール感で有名ですが、それと近しいものを感じました。氏は、世界の建築を参照していることでも知られていますがこの礼拝堂もリソースの1つとして含まれているのかもしれないなぁなんて思ったり。こちらも丁度使用中で残念ながら内部の見学は叶いませんでした。是非いつかまたリベンジしたいところです。