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KOSUKE ARIYOSHI

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TO SCANDINAVIA 7th day

2023.01.06 /

●北欧7日目(①〜②)/ Sweden

①移動 → ②グスタフスベリ図書館 → ③グスタフスベリ観光 → ④スルッセン

7日目。(6日目はこちら/旅初日はこちら)この日はリサ・ラーソンの工房があるグスタフスベリへと行きます。スルッセンからだとバスで乗り換えなしの40分程度で行けます。ちなみにバスやトラムにたくさん乗る場合は事前にSLアクセスカードを購入しているととても便利でオススメです。スイカみたいなカードですね。“474 Hemmesta”行きに乗ってショッピングモールのようなところで下車、アウトレットだと現金が要りそうな予感がして急遽ATMへ。さぁ準備万端です。




いざ焼物を!と思いあたりを見渡すと何やら気になるシリンダー状の建物が。近づいてみるとBIBLIOTEK(図書館)の文字。全くノーマークでしたが、シンプルですがなかなか秀逸な建築で、中に入るとまず最初に正円プラン中央の吹抜に出るように計画されています。吹抜はトップライトから降り注ぐ自然光でまるで外のような明るさ。その光に集まるように読書のできる居場所としてのホワイエが囲み、最外周部に書架や各室が配されています。このような求心性の強い正円プランは、太陽高度の低い北欧では珍しいデザインです。シンメトリーを好んだ建築家ではありませんが、幾何学の強い形態やトップライトやエントランス庇の意匠などは建築家・故黒川紀章さんを思わせます。帰国後に調べてわかったのですが、正式名称はヴェルムド市立図書館、1950年にOlof Thunström(オロフ・トゥンストレム)という建築家(当時54歳)によって市庁舎として建設されたものを1988年に図書館にコンバージョン(用途変更)したようです。元市庁舎だったと言われると求心的な造形も理解できます。トゥンストレムは、中〜晩年グスタフスベリで多く仕事をしており、グスタフスベリの近代化に貢献した建築家だったようです。名前を知られていなくても素晴らしい能力を持った建築家は世界中にたくさんいるんだよ、ということを多くの人にも知ってほしいですね。余談ですが、マルセル・ブロイヤーのチェスカチェアがロビーにさらりと置いてあって自宅にもほしくなりました。チェスカチェアはやっぱりアームレスが良いなぁと改めて思ったり。













予定外の図書館を見学したのち、少し歩くとグスタフスベリの陶磁器エリアに到着します。ちなみにアラビアやイッタラと同じく、グスタフスベリも産地名がそのままメーカー名となっています。日本で例えると唐津が産地だとすると「唐津社」といった具合ですね。グスタフスベリ陶器美術館やたまたま開催中だった企画展を見たり、イッタラのアウトレットなどを見学したのち、リサ・ラーソンの工房&ショップに行きました。リサ・ラーソンのものだけでなく、スティグ・リンドベリのすでに廃盤になってしまっている食器など掘り出し物がお手頃価格で販売しています。食器好きは是非訪れてほしい場所の一つです。興味のあるものをいろいろと見て回っているとあっと言う間に時間がたちます。お腹がすいてきました。旅も中盤、ほんの少しだけ日本食が恋しくなったのと好奇心からランチはお寿司を頂きました。繊細さはともかくとして食材が新鮮だったし恋しかったのもあってか想像以上に美味しかったです。でもやっぱり魚はサーモンなんですね笑











スルッセンに戻りアートブックショップを巡り帰路につきました。PAPER CUTというショップで目についたアートブックをゲット。持って帰るのが大変ですが、、旅先での本との出会いは楽しみの一つ。苦になりません。



明日はスウェーデン最終日。午前中にストックホルム中央駅やアスプルンドの代表作ストックホルム中央図書館を見て、フィンランドのヘルシンキ行フェリーに乗ります。次々回からはヘルシンキの美しい建築をたくさんご紹介しますのでお楽しみに。

続く

TO SCANDINAVIA 6th day Vol.3

2022.12.28 /

●北欧6日目(④〜⑥)/ Sweden

①朝食&移動 → ②スコーグスシュルコゴーデン → ③セント・マークス教会(外部) → ④セント・マークス教会(内部)→ ⑤Parlans → ⑥Kvarnen

6日目その3。(6日目その2はこちら/旅初日はこちら)いよいよレヴェレンツの代表作セント・マークス教会/1960の内部に潜入します。リズミカルなヴォールト天井と鉄骨の混構造で、素材は石、レンガを基調とし、存在を消したスチールとガラス、什器や照明の木と真鍮をポイントで使ったシンプルなものですが、アシンメトリーな構成と厳選された光によって情感ある空間となっています。当教会に限らず北欧の教会建築は、太陽高度が低いために横からの光を取り込むように祭壇の位置や建物の構成が計画されていることが多いです。トップライトで採光するのとは異なり、光の向きにプランが大きく影響を受けるため、ヨーロッパ建築によくあるシンメトリー(左右対称)な構成ではなく、必然的にアシンメトリー(左右非対称)な構成になるのでしょう。個人的な感想ですが、このように環境に呼応する建築は必然性があり美しいと思います。
















セント・マークス教会を見学したのち、セーデルマルムに戻ります。当時できたばかりのParlansという話題のキャラメルショップに寄り買物を済ませたのち、ディナーのため100年以上の歴史を持つという正統派老舗レストランのKvarnenへ。雰囲気のある店内とシンプルだけど美味しい料理に満ち足りました。






明日はグスタフスベリでリサ・ラーソンの工房”KERAMIK STUDION”を訪問します。

続く

TO SCANDINAVIA 6th day Vol.2

2022.12.28 /

●北欧6日目(③)/ Sweden

①朝食&移動 → ②スコーグスシュルコゴーデン → ③セント・マークス教会(外部) → ④セント・マークス教会(内部)→ ⑤Parlans → ⑥Kvarnen

6日目その2。(6日目その1はこちら/旅初日はこちら)日本では森の墓地の設計者と言えばグンナール・アスプルンドですが、知られざるもう一人の設計者シーグルト・レヴェレンツの代表作「セント・マークス教会」が、森の墓地からトラムで2駅のところにあります。大変に素晴らしい建築なので、もし森の墓地へ旅行を計画されている建築好きの方がいらっしゃいましたら是非行かれてみてください。森に佇む控えめな建ち方、重厚な壁厚と開口部の繊細なディテール、光の取り入れ方、雨水の処理の仕方、アシンメトリーで情感ある内外部、レンガの使い方と納め方、照明デザインなどとても見所の多い傑作です。もっと有名になっても良いと思いますが、良くも悪くもメディアの与える影響力を実感します。実際、日本でレヴェレンツを紹介した書籍はほとんど見かけません。しかし、良いものは良い。メディアは知識として有効ですが、最後はきちんと自分の目と肌で判断できることが大切ですね。




























次はお待ちかね、内部をご紹介していきます!

続く

TO SCANDINAVIA 6th day Vol.1

2022.01.05 /

●北欧6日目(①〜②)/ Sweden

①朝食&移動 → ②スコーグスシュルコゴーデン → ③セント・マークス教会(外部)→ ④セント・マークス教会(内部)→ ⑤Parlans → ⑥Kvarnen

6日目その1。(5日目はこちら/旅初日はこちら)旅の疲れもなんのその。いつものように早起きをして準備をすませ、バーンズホテルの食堂でモーニングを頂きます。特別手の込んだ料理があるわけではないのですが、雰囲気が最高に良いことに加えてくシンプルに素材が美味しくてついつい食べ過ぎてしまいます。この日の目的地は、、なんと墓地!スウェーデンまで来て半日かけてわざわざ墓地へ行きます笑 お昼はハイキングの予定なので、NK(エヌコー)という王室御用達の高級デパートの地下にあるデリで事前にお昼ご飯を調達。Tセントラーレン駅からトラムに乗ります。美麗なグラフィックが描かれたモダンなモザイク画が素敵です。Tセントラーレンからトラムに乗って30分ほど南下するとスコーグスシュルコゴーデン駅に到着。目指す墓地の名前がそのまま駅の名前なので迷わず行けました。駅を降りてサインに従いしばらく緑道を歩いて行くと目的地に到着です。北欧は光も空も本当に綺麗で、緑も映えます。






スコーグスシュルコゴーデン(森の墓地)は、1994年に世界遺産に登録された火葬場と5つの礼拝堂をもつ共同墓地です。コンペの末、当時無名だったグンナール・アスプルンドとシーグルト・レヴェレンツの共同設計案が勝利、1940年に完成しました。共同設計と言っても、メインのほとんどをアスプルンドが設計してしまったことやレヴェレンツが途中でプロジェクトを離れたことから、日本では森の墓地の設計者=アスプルンドと思われていて、レヴェレンツが共同設計者であることはあまり知られていません。セーデルマルムのアートブック店主に直に聞いた話ですが、あえて「日本では」と書いたのはスウェーデンではむしろレヴェレンツの方が評価されているからです。この森の墓地のあとにレヴェレンツの代表作を訪れますが、素晴らしい設計者であったことはその時に改めてご紹介します。ちなみにアスプルンドの死後、森の墓地を一手に引き受けてまとめあげたのもレヴェレンツです。

森の墓地は、死すれば森に還るという北欧の死生観が広大なランドスケープとして表現されている点が最も素晴らしい点だと思っています。ランドスケープが広大だということは、参列者はいやが応にも歩かなければならないわけですが、その歩く行為そのもの、時間までをも葬儀における瞑想的な要素として計画されていて、それが本当に素晴らしい。もちろん、それは美しい景観、建築、ランドスケープのバランスあってこそで、設計者の力量をうかがい知ることができます。

左手には真鍮が経年し緑青化した笠木とさほど高さのない(広大なスケールに対してはむしろ低い)スタッコの壁が目線を切り、右手はそれとは反対にどこまでも開放的で美しい丘陵が広がります。自然と意識は目の前の一本道に注がれ、その先のおそらく巨大なのであろう(距離があるために歩きはじめはその大きさがわからない)十字架を見つめ、ゆるやかな登り坂を黙々と歩く。地続きなのに、歩くほどに徐々に別のどこかへと向かっているような不思議な気持ちになります。やがて神殿のような列柱の大広間に出ます。火葬場の前室とのことですが、礼拝堂や火葬場は使用中で、中まで見られなかったのは残念でした。彫刻は、ヨーン・ルンドクヴィス作。















レヴェレンツの瞑想の丘からアスプルンドの建築群を俯瞰することができます。リズミカルな建築群とシンプルなシークエンスが一目でわかりますね。瞑想の丘は極めてシンプルですが、それゆえに静寂でとても美しいランドスケープです。風習でしょうか、石垣の上には遺族のものなのか想い想いのメッセージが書かれた白い小石が並べられています。その様子に不謹慎ながら哀しさというより楽しさ、お手紙のような意図を感じてしまったのですが、もしかすると死ぬということは誕生の前段であり必ずしも絶望ではないという死生観によるものなのかもしれません。そのあたり詳しい方がいらっしゃったら教えてください。昼休憩をしたのちに、アスプルンドが設計した森の礼拝堂に向かいます。






1920年に完成した森の礼拝堂は、この墓地で最初に完成した建物だそうです。日本の鳥居を思わせる小さなゲートをくぐり、針葉樹林を一本道に突き進んだ先にトンガリ屋根の小さな礼拝堂が見えてきます。何気にこの小さなゲートが結構効いていて、これによってゲートの向こう側を聖域のような厳かなエリアに仕立て上げているように感じます。塀の低さから考えても防犯としての役割はほとんどありません。伊勢神宮の正宮にも通じるその手法ははたして偶然でしょうか。また、可愛らしい建物に意識がいきがちですが、まずもって建ち方が非常に優れています。そして小さすぎるくらいに抑えたスケールがどこか物語的、浮世的な印象を与えています。建築家であり建築歴史家である藤森照信氏もミニチュアのように錯覚させる独特のスケール感で有名ですが、それと近しいものを感じました。氏は、世界の建築を参照していることでも知られていますがこの礼拝堂もリソースの1つとして含まれているのかもしれないなぁなんて思ったり。こちらも丁度使用中で残念ながら内部の見学は叶いませんでした。是非いつかまたリベンジしたいところです。








続く